背美鯨鬚(セミクジラヒゲ)
萬屋仁兵衛工房所有
展示・ 貸し出し 可能
【鯨鬚(くじらひげ)】
- ヒゲクジラ亜目動物の上顎部に見られる、繊維が板状となった器官である。
- 濾過摂食のフィルターとしての役割を持つ。プラスチックなどの普及以前には各種工業素材に利用された。
- 加工しやすい硬さで、軽く弾力性があるなどの優れた性質があるため、様々な製品の素材に用いられてきた。
【素材としての鯨鬚】
- 特に「セミクジラ科の鬚」は、長くて非常に柔軟かつ弾力があることから重宝され、結果として乱獲の一因ともなった。
- 後に弾力のある金属線やプラスチックが普及したため、現在では工芸的な用途を除いては需要は殆どない。
- 江戸時代の日本でゼンマイ部等の材料とされた。からくり人形や文楽人形の操作索で使用される。他に釣竿 、扇子、呉服尺 、ヴァイオリンの弓 などにも使用される。
【文化財復元修理例】
文化財修理前「人形首部」
胡粉を剥がし乾燥後、木地のヤニ止めで和紙を貼った「人形首部」
- ●人形首部に使用する背美鯨鬚を交換した画像。
- ●虫食いに大変弱く一番折れる原因です。
- ●鬚先端に正絹糸を通して引くと特有の弾力で頭がうなずく仕組み。
- ●クジラ鬚を扱う職人が少なく、多くの声が寄せられる復元修理です。
【背美鯨(セミクジラ)鬚】
- ヒゲクジラ亜目 セミクジラ科に属するクジラの1種。温帯から亜寒帯の沿岸に生息する。日本哺乳類学会では絶滅危惧種に登録されている。
- 日本では商業捕鯨による捕獲が禁止されている。セミクジラは1970年代を最後に中国や韓国など日本以外のアジア諸国沿岸での確認がない。
当工房が所有する大変希少な「 長尺 背美鯨鬚 」
- 2019年、奇跡的なご縁から紹介頂いた工芸品業者様より、最後の在庫として大切に保管していた「長尺クジラ鬚」を特別に入手しました。海外輸入禁止であること、国内でも二度と手に入らないといえます。
- これまでに文化財保護に必要な「セミクジラ鬚」特有のしなり・弾力ある新素材の開発が進められていますが、未だ解決できない報告がされています。